歯科治療の本質とは? 予防編 そのⅠ
毎日多くの方々が歯科治療を受けられます。
当医院にも様々な患者様が来院され、その状況は人それぞれですが、その背景をなすものはだいたい同じで良く似ています。
これについて、45年間の開業経験から色々と感ずることが多々ありますので、それをお話ししましょう。
身体には多くの病気がありますが、これを予防の面から分けてみると、予め予防しておくと防げるものと、突然発症する思わぬものとがあります。
予想してもいなかった病気も、実はもう少し注意しておけば防げていたかもしれませんので、用心するに越した事はありません。
そう考えると、歯科の疾患は殆どが予防しておけば大丈夫なグループに入りますから、これをきちっと心得て、効果的に実行出来ていれば虫歯や歯周病その
他に悩まされずに済むはずです。
それでも日本の国民の間に歯科疾患が多いのです。
その理由は、予防法に問題があるようです。
それでは取りあえず歯科の予防に就てあらためて考えてみましょう。
歯科の予防とは?
口の中に限ると、ここに現れる病気はほとんどが細菌感染によるものです。
細菌さえ取り除いていれば問題は起こらないのです。
またその細菌の居場所は概ね口の中の表層にあるので、これを取り除こうと思えば、本当は難しくないはずです。
これをいつも綺麗にしていれば一生涯歯は丈夫で良く咀嚼出来、体全体の健康に大きな良い影響があると思われます。
ただし、うがいだけでは細菌は取れません。
口の中の細菌叢は非水溶性なので、うがいだけでは効果は有りません。やはり従来通りのブラシを使って細菌叢を効果的に除去しなければなりません。
歯科の予防はそれ程難しくないはずなのに、相変わらずほとんどの人が歯周病に罹り、また多くの人に虫歯が進行しているのが現状ですが、その理由は誠
に単純です。
これについて触れてみましょう。
歯科疾患の予防法について
歯科の大切な予防には原則がありますが、一般にはこれから外れている場合が多いようです。
それは、
① 予防する心構えが希薄である事、次に
② 外してはいけないポイントから大きくずれて清掃している事、
③ それは取りも直さず、自己流の清掃法に終始していること、
④ また電動ブラシに頼り切って、本当に除菌出来ているかどうかのチェックが無くてそれだけのやりっぱなしで終わっている事、
⑤ またこんなもので良い、と自己満足的に評価してしまう事、
等々です。
それでは①「予防する心構え」についてから始めましょう。
高齢化社会の中で一番先に申し上げたいのは誤嚥性肺炎です。これは誤って気管に唾液と共に食べ物等が入ってしまう事ですが、その時口腔内に細菌が沢山
繁殖していると、これも肺の中に入って感染するので、出来るだけ口の中を普段から綺麗にした方が良いと思われます。特に歯周病等の強い起炎菌がある
と、重篤な肺炎を招く恐れがあるので注意が必要です。
また虫歯や歯周病をつくる病原菌は血流に乗って全身に運ばれるので、全身疾患のリスクになる可能性があります。
昔からリスクが高いと言われているのは心臓の弁膜症です。
これだけでなく、口腔内の細菌は様々な臓器にまで及んでいる事が報告され、リューマチにまで関係していると言われるようになりました。
また厚生労働省がいま盛んに力を入れているのは歯周病と糖尿病との関係です。
両者は高い相関関係を持ったリスクが指摘されています。
歯周病が進むと糖尿病も進行し、糖尿病が軽減すると歯周病も改善されます。
ですから口の中の細菌が溜まったままになっていると、虫歯・歯周病だけでなく、体全体の病気の原因にもなるので、こういった事を心得ていただきたいと思います。
また高齢化社会では高齢時の健康が問題になっています。
高齢者で元気な方は食べ物を良く咬めて消化器系に負担をかけず、胃腸が丈夫なようです。
それだけでなく、良く咬める事は精神にも影響があり、意識がはっきりとするので、これはとても大きな事です。
高齢になっても元気であり、全身疾患のリスクを出来るだけ少なくするためにも、咀嚼機能を保全しておく事が大切です。
ですから歯科疾患にかからない様に日ごろから予防する努力が現代は求められており、その意識をきちっと持っていただく事が大切になります。
予防は勿論大切ですが、それと同じように大事なのは年に2~3回の定期検診です。
予防がうまく行っているかどうか、或いは初期の歯周病等が無いか等の検診がとても大切です。
纏めますと、歯科については現代では、予防と定期検診がとても重要だと思われます。
鈴木歯科医院 鈴木浩一郎
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